インターネットラジオ生放送の実践法を基礎からわかりやすく解説!

ネットラジオマイクレビュー/インターネットラジオやPodcastに使うマイクの条件

インターネットラジオやPodcastに使うマイクの条件

 実際のレビューを始める前に、インターネットラジオやPodcastに使うマイクには、どのような条件が必要なのかを考える。

目次

一般的なインターネットラジオやPodcastのスタジオの状況

 放送局では、スタジオとして、放送や録音を行うために設計された専用の部屋を用いている。これら専用のスタジオは、外部からの音に対する遮音性が高く、内壁に吸音材を設置するなど、室内での反響音も考慮した設計がされている。
 しかしながら、ほとんどのインターネットラジオやPodcastのスタジオは、単に配信者が「スタジオ」と呼んでいるだけの、「一般的な居室」である事が多い。
居室は生活をするために設計された部屋であり、外部からの遮音性が低く、室内での反響音も全く考慮されていない。
本稿で扱うのは、もちろんこの「居室スタジオ」で利用するマイクだ。

条件その1:あまり感度が高くないこと

 室内でこれをお読みの方は、是非一度読むのを止めて、今周囲でどんな音がしているのか、耳を澄まして聞いてみて欲しい。
パソコンやエアコン、冷蔵庫などの機械音、近くを走る車の音、隣室や隣家から聞こえる物音や話し声などなど、大変多くの音に囲まれて生活していることがおわかり頂けるのではないだろうか。
ネットラジオやPodcastの放送においては、一部の例外を除いて、これらのほとんどが、配信したくない不要な音、「雑音」である。
 次に、部屋の中で少し大きめの声を出したり、ぱんぱんと手を叩いたりしてみる。すると、その声が少しでも響いて聞こえないだろうか?
普段の生活では気にならないこの反響音も、マイクで拾ってみると案外大きく聞こえる。人間の脳には、耳が拾った様々な音の中から、不要な音を聞かず、必要な音だけを聞く能力が備わっている。だから、これらの反響音や、生活音などは、意識して初めて聞こえてくるが、日常生活においてはほとんど気にならない。
 しかし、マイクには、拾った音の中から必要な音を選択するなどという高度な機能は備わっていない。
マイクは、拾った音を単に電気信号に変換する道具なので、不要な音も、拾ってしまえばきちんと電気信号に変換し、録音や放送に乗せてしまう。
感度の良いマイクは、小さな音もきちんと拾ってくれるが、雑音の多い居室スタジオでは、逆に小さな音は拾ってくれない方がありがたい。これらが、居室スタジオで使用するマイクは、感度が低いものが望ましい理由だ。

* 実験

 上記の内容は、以下のような実験によって、自分で確かめるとより実感できる。
ICレコーダーとカラオケマイク、カラオケマイクを差し込んで録音できる機材の三つを用意する。
始めに、ICレコーダーを机に起き、録音ボタンを押して、少し離れた場所から何か適当にしゃべった後、手をぱんぱんと叩いてから、停止ボタンを押す。
次に、同じ部屋で、カラオケマイクを何かの機会に繋いで、録音ボタンを押してから、口元から5センチぐらいのところで普通の声でしゃべった後、マイクを動かさずに、軽く膝を平手でぱんぱんと叩き、停止ボタンを押す。
 これら二つの音源を聞き比べると、前者には部屋の反響音や、そのときにしていた様々な音が録音されており、後者には自分の声だけが録音されているように感じるのではないかと思う。
これは、ICレコーダーのマイクは比較的感度が高く、カラオケマイクは感度が低いためである。
以下に二つのサンプルファイルを用意した。

* 余談その1:海外の小規模ラジオ局では感度の悪いマイクをあえて使っている

 日本は、放送局を開局するのにいろいろな制約が有り、大変な困難を伴う国だが、海外には、比較的容易に放送局を開局できるところがある。
知人の話によると、アメリカには大変多くの小規模ラジオ局が存在し、それらは必ずしも、日本の商用放送局のように、専用設計のスタジオを使っているところばかりではないのだそうだ。
本格的に放送を行いたい方は、アメリカの小規模ラジオ局で多く使われているマイクを参考にするのがいいのではないだろうかと思う。

条件その2:ポップノイズや歯擦音、吹かれに強いこと

 感度の悪いマイクを口元に近づけて録音すると、声だけではなく、声を発するために利用された空気が発生させる余分な音も拾ってしまう。
例えば、「ぱ・ぴ・ぷ・ぺ・ぽ」などの破裂音を発すると、口から空気の塊が出て、それがマイクにそのままぶつかり、振動板を「ぽんっ」と振動させてノイズになる。これが「ポップノイズ」と呼ばれるものだ。
また、「さ・し・す・せ・そ」などと発生したときにも口元から多くの空気が出て、それがマイクにぶつかり、「しゃしゃ」というような音を拾ってしまう。これを「歯擦音」という。
加えて、「ふ」の音を出すと、先ほどの歯擦音よりも多くの空気が口元から出てマイクにぶつかり、「ぼぼー」というような音を発生させてしまう。これを「吹かれ」と呼ぶ。
あえてこれらに弱いマイクを用いて、ポップノイズと歯擦音、吹かれとはどういうものなのかを説明するサンプルファイルを作成したので掲載する。
 アナウンスのトレーニングによって、これらの音を発生させないように話せる技術を身につけることは可能だが、ゲストを呼んだり、慣れていない人にアシスタントを頼んだりすることも考えると、人の技術ではなく、マイク側で対策をするのが賢明だ。

条件その3:マイクと口の距離が変わることによる音質の変化が少ないこと

 マイクには、ダイナミックマイクとコンデンサーマイクの2種類がある(これについては別項で詳しく解説しているのでそちらを参照されたい)。
このうち、ダイナミックマイクには、音源との距離が近ければ近いほど、低い音が強調されてしまう。これを「ダイナミックマイクの近接効果」という。
これが顕著に表れるマイクを用いてダイナミックマイクの近接効果を説明するサンプルファイルを作成した。
人は、話すときにじっとその場に止っているわけではない。話が盛り上がってくれば、身を乗り出して話そうとするため、口の位置が変わる。うなずけば頭の位置に伴って、口の位置も変わる。
そのたびに起きる音質の変化は、イヤホンやヘッドホンで聴いている人には、意外に気になるものだ。なお、このときに音質だけでなく音量も変化するが、音量の変化は、「コンプレッサー」という機材を用いて強制的に一定に保つことができる。

条件その4:適度な指向性を持つこと

 マイクには、向けた方向から来る音だけを拾う「単一指向性マイク」と、どの方向から来る音も同じように拾う「無指向性マイク」がある(指向性については別項で詳しく解説しているのでそちらを参照されたい)。
多くの居室スタジオは、様々な雑音で満ちあふれているので、それらを拾わないために、単一指向性のマイクを選択する。
単一指向性のマイクにも、どの程度鋭く、向けた方向から来る音だけを拾うかに寄って、いくつもの種類がある。
雑音を避ける意味では、向けた方向の音だけを鋭く狙ってくれる方が良さそうだが、人の動きを考慮すると、あまりに鋭い指向性のマイクは好ましくない。
人は、話をするときに、人の目を見て話をする。日常生活においてはこれが普通だが、ラジオ放送においては、出演者同士が目を合わせて話をすることよりも、リスナーの耳、つまりマイクの方を向いて話すことの方が重要だ。
放送に慣れている人であれば、マイクの方を向いて話してくれるだろうが、慣れていない出演者は、どうしても、他の出演者や、あなたの目を見て話そうとする。普段の生活をそのときだけ変えてくれと言っても、意外に難しい。
そこで、少しマイクから口の位置がずれてしまっても、音を拾ってくれる程度の適度な指向性のマイクを選択することが大切だ。

今後のレビューの方針

 これらの条件を考慮し、今後このページでは、以下のようなポリシーでレビューを進める。

* ダイナミックマイクを中心に取り上げる

 コンデンサーマイクは感度の高いものが多く、専用に設計された部屋で利用しないと、雑音や部屋の反響音をきちんと拾ってしまう。
また、湿気や衝撃に弱いものが多く、ダイナミックマイクと比較して、取り扱いや保管に注意を要するものが多いため、あまり感度が高くなく、湿気や衝撃に強く、保管や取り扱いが容易なダイナミックマイクを中心に取り上げる。

* 卓上スタンドとマイクアーム以外の別売のアクセサリーを使用しない

 レビューに当たっては、原則卓上スタンドとマイクアーム以外の別売のアクセサリーを使用しない。
ショックマウントやウインドスクリーン、ポップガードなどは付属している場合にのみ使用する。
これは、購入しようとしたときの費用の計算を容易にするほか、その製品の費用対効果を把握しやすくするためだ。
マイク単体が安いからと言ってそれだけ買って別売品を付けないと、放送用途には使えないというのでは、結局付属品の充実している別モデルを買った方が費用対効果が高かったという結果を生みかねない。

* 次の項目のテストを行う

  • ポップノイズへの強さ
  • 歯擦音への強さ
  • 吹かれへの強さ
  • 近接効果による音質の変化
  • うなずいたり人を見ようとしたときの音の変化
  • ショックマウントの性能
  • ACアダプタ、無線LAN親機などの外来ノイズへの強さ

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