インターネットラジオ生放送の実践法を基礎からわかりやすく解説!

音とスタジオ用音響機材/マイクの基礎知識と選び方

マイクの基礎知識と選び方

本稿の目次

マイクとその種類

 マイク(マイクロフォンの略称)は振動を電気信号に変換する装置で、そのほとんどは空気の振動(音波)を電気信号に変換する目的で使用される。
 変換方式によって動電型・静電型・圧電型がある。
◆ 動電型
 磁石とコイルを組み合わせて、磁界の中でコイルが音波によって振動した際にコイル両端に起きる電圧を音声として取り出す。
ダイナミックマイク、リボンマイクがこの方式
◆ 静電型 
振動板と後ろの固定電極との間に直流電圧を加えておき、振動板が動いた際に固定電極との間が変化する時に流れる電流を音声信号として取り出す。
コンデンサマイク、エレクトレットコンデンサマイクがこの方式。
◆ 圧電型 セラミックやロッシェル塩の結晶に対角線に力を加えることで起きる電圧を音声電流として取り出す
セラミックマイク、ピエゾピックアップがこの方式

マイクの指向性

 圧電型以外のマイクでは特定の方向からの音を良く拾えるような構造にすることができる。

単一指向性マイク

現在市販されている棒形で頭がやや大きくなっているダイナミックマイクやコンデンサマイクのほとんどは単一指向性である。これは感度変化を示すパターンのグラフがハート型をしており、最もとがった部分の感度が最大である。このグラフの形がハート型であるために「カーディオイド」と呼ばれている。

両指向性マイク

 リボンマイクは前後両側の感度が高い8の字指向性の物がほとんどでコンデンサマイクでも外装の工夫や内部回路の工夫によって両指向性(双指向性)マイクが作られている。余談になるが、パソコンなどで使用されているノイズキャンセルマイクは小型の量両指向性マイクを組み合わせた物である。
 マイクと音源との距離が近い場合を「オンマイク」、離れている場合を「オフマイク」という。これは相対的なもので、30cmでもオンマイクと言うこともある。大体20cm以下をオンマイク、それ以上離れている場合をオフマイクと言うことが多い。

無指向性マイク

 あらゆる方向の音をできるだけ同じ感度で拾えるような構造のマイクで全指向性マイクとも言う。アナウンサーが襟元に付けるピンマイクやインタビューの際に手で持つマイクは無指向性が多く、またスタジオ内での複数の人々の声をそのまま雰囲気ごと拾う目的でも使われる。インタビューマイクは屋外での使用が多く、1本でインタビューの声や周囲の環境音まで集音できる堅牢な無指向性のダイナミックマイクが使用される。代表的な物はシュワー(SHURE)のSM63、ソニーのF115B等である。

マイクの種類と特性の違い

 単一指向性と無指向性のダイナミックマイクには基本的な特性の違いがある。
これは単一指向性ダイナミックマイクのほとんどがステージでのボーカルやバスドラムの集音、演壇でのスピーチ用を想定して設計されているからである。
単一指向性マイクを音源に30cm以上近づけると極端に低域が持ち上がる近接効果という現象が起こり始める。
ボーカルやスピーチ用のマイクは周辺ノイズの多い場所で使うことを想定しているためにマイクと口との距離を15cm以内で使用することが多い。このため30cm以上離れた音でも低域まで集音できるマイクとして設計した場合は極端に低域が持ち上がったり息の吹かれによるノイズを拾ってしまうなど使用上の不具合が多い。これを防ぐためにあらかじめ設計段階で15cm以内で使用して近接効果で低域が持ち上がった時に最も良い状態にチューニングしてある。そのため、これらのマイクから20・30cm以上離れた音を集音すると低域が極端にカットされた音になってしまう。
無指向性マイクでは近接効果はないので音源からの距離が離れていても低域まで集音が可能である。
単一指向性のダイナミックマイクで音源からの距離が離れていても低域が落ちない物はきわめて限られており、機種名で言えば、古くはAKGのD224・アイワのDM68A、現行品ではエレクトロヴォイズ(ELECTRO VOICE)のRE20・RE27、ゼンハイザー(SENNHEISER)のMD421MKII・MD441U、シュワー(SHURE)のSM7B等、世界中でも僅かである。
これらのマイクではローカットスイッチが必ず付いている。
☆ (なぜ離れていても低域まで拾うダイナミックマイクがつくられないのか
 ダイナミックマイクとコンデンサーマイクとを比較すると大きな音から小さな音まで忠実に集音できるのはコンデンサーマイクである。ファンタム電源を供給する方法が統一されていなかった時代は電源や電池などをそれぞれのマイクで持たなければならず、機材の引き回しなどが大がかりになった。そのため、ステージでの複数のマイクを使用した楽器集音ではダイナミックマイクやリボンマイクが使用された。1970年代にソニーから安価なエレクトレットコンデンサーマイクが商品化されるとその音質の良さからコンデンサーマイクの市場は急速に広まってゆき各社からエレクトレットを使用したコンデンサーマイクが市販されるようになった。
1980年代後半からファンタム電源で使用できるコンデンサーマイクやファンタムを搭載したミキサーが楽器市場に登場しコンデンサーマイクはステージでも多く使われるようになって録音用やダイナミックマイクはコンデンサーマイクにその地位を明けわたしていった。
しかし、現在のように単一指向性ダイナミックマイクのほとんどがごく一部の製品を除いてボーカル用とバスドラム用だけになってしまったのは21世紀に入ってからのことである。
このように高性能コンデンサーマイクが低価格になったこと、特性の良いダイナミックマイクは高度な技術が必要なためにコストダウンが難しいこともあってダイナミックマイクの広帯域な物は作られなくなってきた。
 1990年代の初期まで日本国内のほとんどのAMラジオ放送局ではリボンマイクと共にアイワのBTS1級単一指向性ダイナミックマイクDM68Aが使用されていた。これはシュワーのSM57に比べると指向性の鋭さには劣るものの音色はナレーションやアナウンスなどに適した、オンマイクでもオフマイクでも使用できる物であったが、当時定価が30,000円もした上に丈夫さの面でラフな使い方に適さなかった。)
 コンデンサーマイクでは音源から離れていても低域まで十分集音が可能であるためにマイクから離れた所の音声を拾う場合はコンデンサーマイクを使用するが一緒に周辺の部屋ノイズも拾ってしまうので防音が不完全な部屋や話者が原稿やキーボードなどを操作しながらの集音には適さない。
 歌やスピーチなどに使用されるダイナミックマイクで一般的な物は「ボーカルマイク」と呼ばれる物で、手で持っても、フォルダーに挟んでスタンドに固定しても使用できる多目的な物である。
これらのダイナミックマイクは先端が太くなっており、先端を向けた向きの音を高感度で集音する。これをエンドアドレス(軸方向指向性)という。
 これに対して、リボンマイクやスタジオ用のコンデンサーマイクでは本隊の横が網になっており横からの音を高感度で集音する。これをサイドアドレス(軸直交方向指向性)という。
 外観からは分かりにくいと言われているのがゼンハイザーのMD421II・同MD441Uでこれらはエンドアドレスである。
 ボーカルマイクの代表的な物には、シュワー(SHURE)のSM58・SM57、最近ではきわめて低価格であるにも関わらず音質が優れているベリンガー(BEHRINGER)のXM8500(ウルトラヴォイス)等多くの機種がある。
 これらのマイクはナレーションやスピーチ用にも使用され、メンテナンスもほとんど必要ないために多くの現場で使用されている。
 専門の技術者がいない所ではメンテナンスをしなくても長期間安定的に使えることはマイク選びの重要なポイントである。
 単一指向性マイクでは全面だけでなく横の部分にも音波を取り入れる部分があり、横や後ろから聞こえてくる音に対してはこの前面の穴と横の穴との音波を内部で干渉させて感度を下げることで指向性を作り出している。
 頭の丸いボーカルマイクの場合、外からは見えないが球の前面と横とでは内部の音波取り入れ穴の位置が異なっている。
 ボーカルマイクでは内部の音を電気信号に変えるユニットは防振ゴムなどの素材で本体から浮かせて取り付けてあり、手で持ったときなどの振動が音として伝わりにくくできている。この外部振動の伝わりにくさはマイクを選ぶ際の重要なポイントの一つである。

マイクの電気回路から見た使用上の注意

 ダイナミックマイクやリボンマイクはトランスを内蔵している物がある。最近のダイナミックマイクでは高磁力のマグネットと軽量コイルによって150Ω以上のインピダンスのユニットができるようになったためトランスは使用されなくなったが、以前からあるマイクではユニットのインピダンスはコイルの巻き数をできるだけ少なくして軽量化するために30Ω付近で、その出力をトランスで昇圧して150Ω以上にするものもある。
これらのトランスを内蔵したマイクに僅かでも直流が流れるとトランスが1方向に磁化され、電流を流すことを止めた後でも高域が落ちてしまう。XLR-3のコネクターでバランス接続する場合は誤って48Vファンタムを加えてしまっても問題は起きないように設計されている(古い機種の中には直流が流れ込んでトランスが切れてしまう物もある)がアンバランス接続やパソコンのマイクジャックにミニプラグで接続する場合は注意が必要である。
トランスを内蔵していない物ではこのような問題は起こらない。
 トランス内蔵のダイナミックマイク

 シュワー SM57 SM58 BETA57 BETA58 等

 エレクトロヴォイス RE20
 テレフンケン M80
 トランスを内蔵していないダイナミックマイク
 シュワー PG57 PG58 55SHII SM7B SM63 等
 エレクトロヴォイス RE27 NDN767 等
 AKG D5 D7 D770 D112 等
 ゼンハイザー MD421-MKII MD441 MD431II その他Evolutionシリーズ全般 等
 ベイヤー M88TG 等
 ベリンガー XM8500
 最近ではダイナミックマイクはトランスレスがほとんどで、新しい機種ではテレフンケンやシュワーのBETAシリーズなど特別の音色に拘った物に限られている。

マイクスタンドとアクセサリ

 マイクを使う際にマイクロフォン本体を固定するためアクセサリーが販売されており、適切な選択をすることでより良い集音が可能となる。

マイクスタンド

  • テーブルスタンド テーブルの上に置いてマイクを固定して使用する。
  • フロアースタンド 床に置いて上にマイクを固定して使用する。
  • ブームスタンド 床や卓上に置いたスタンドから横に長い棒を出し、そこにマイクを固定して使用する。真下にスタンドを置けない場所や楽器等に近づけて集音する際に使用する。
  • フレキシブルスタンド スタンド全体もしくはその一部が柔らかく、ある程度自由に曲げられるようになっており、その先端にマイクを固定して使用する。口元にマイクを近づけて周囲のノイズをできるだけ拾いたくない場合等に使用する。フレキシブルシャフトの先にマイクを直接接続できるXLRコネクタが付いている物と、マイクを挟み込むホルダーを固定するねじが付いている物とがある。

マイクホルダー

 マイクをスタンドに固定する目的で使用されるアクセサリー。多くのマイクは円筒形であるため、その筒を挟み込むような形状で、中には様々な太さのマイクに適応できるように内径を変えられる物もある。
マイクの中には、スタンドに固定するねじ穴を付けた部分が本体に付いている物や、本体の形状が円筒形ではないために専用のホルダーを使用する物もある。

ホルダー固定用スタンドねじ

 マイクスタンドに付いていてホルダーを固定するためのねじには一般的に以下の4種類があり、このうち最も太いPF-1/2(ガスねじ)と最も細いU-1/4(カメラ三脚ねじ)は現在は放送現場や映像制作現場での使用がほとんどである。
 「マイクスタンドねじ一覧」

  • PF1/2 (JIS・BTS規格のソニー等日本製のマイクで使用) 20.955mm
  • U5/8インチ (SHURE で主に使用) 5/8インチ=15.875mm
  • U3/8インチ (AKG・SENNHEISER・パナソニック等で使用) 3/8インチ=9.525mm
  • U5/16インチ (ソニー等日本製のマイクでかつて使用) 5/16インチ=7.938mm
  • U1/4インチ (カメラ三脚ねじ) 1/4インチ=6.35mm

ウィンドスクリーン(風防)

 マイクの音を拾う部分にはめ込んで息や風で吹かれて出るノイズを防ぐための物で材質はウレタンや複数重ねられた網でできている。
シュワーのSM58やベリンガーのXM8500等多くのボーカルマイクの頭の丸い部分はウィンドスクリーンになっている。
これらの金属製のウィンドスクリーンは音に独特のキャラクターを持たせるためにマイクの個性が強く出る傾向がある。声の個性をより引き出すためにはシュワーのSM57等、頭にウィンドスクリーンが付いていないマイクに専用のウレタン製スクリーンを装着して使用することも多い。

ウィンドジャマー

 風の強い屋外で集音する場合はマイク全体を包み込んでしまうウィンドジャマーと呼ばれる大型の風防が使われる。これはそれぞれのマイクに合わせた物が販売されている。風よけにウレタンや綿でマイクを包んだ場合は高域がかなり落ちてしまうが、ウィンドジャマーは音質をできるだけ損なわずに強風の風ノイズを減らす材質でできているために比較的高価になってしまう。

ポップガード

 マイクの前に取り付けて声の破裂音の際に出る瞬間的な息による吹かれを防ぐための物で、できるだけ音質に悪影響を与えずに風を通しにくい材質でできている。ウィンドスクリーンのようにマイクを包み込むような物と、スクリーン状の物とがある。

powered by HAIK 7.3.0
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional