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音とスタジオ用音響機材/コンプレッさー・リミッター・クリッパー

コンプレッさー・リミッター・クリッパー

目次

概説

 音には強弱があり、突如として大音量になる場合もある。音声を電気信号に代えて録音したりネットなどで配信する場合、そのメディアの持っている音量変化の範囲があり、その範囲を超えた変化に対してはノイズが増えたり、歪んだりして実用にならない。
 このようなことを避けるために自動的に音量を変化させる機器が使用される。小型ICレコーダー等の自動音量調節(AGC)もこの機能の一つである。

コンプレッサー

 音量変化の範囲を一定範囲に圧縮してノイズの多い場所やあまり大きな音量変化に追従できない小型の再生装置でも聴きやすくする目的で使用される。大声で叫んだ場合と通常の会話とでは60DB以上の音量変化があるから、そのまま放送に乗せたのでは大規模なオーディオシステムで無い限り再生が難しい。そのような場合にこの音量変化の範囲を40DB以内に圧縮して小型の音響システムで聴いても音が十分に再生できるようにする。
コンプレッサーは音量変化の範囲を20DB以内や10DB以内に圧縮することもできるが、あまり音量変化を少なくするとかえって声の強弱が少なくなりすぎて不自然になってしまう。適切な設定をすることで、大音量にしなくても聞き取りやすい平均レベルの高い音声配信ができる。

リミッター

 通常の会話やナレーションなどではなにも変化はさせないが、マイクに極端に近づいてしゃべったり、大きな音が入るなど急激な大音量に対してアンプの音量を絞り込み、送り出しの回線への大入力を避ける目的で使用される。大音量が入った直後は音量が絞られているために周囲のノイズが急に小さくなったり、普通の声でしゃべっているにも関わらず音量が小さく聞こえ、一定の時間を経過すると絞られた音量が元に戻る。これがリミッターのリカバリータイムである。
リカバリータイムが短すぎると大音量の声などに対してコンプレッサーで強く圧縮した時のような不自然な感じに聞こえるが、リカバリータイムが長すぎると一度大音量で絞り込まれた音量が戻るまでに声が小さく聞こえる場合がある。音楽などを流す場合はある程度リカバリータイムを長く取らないと音楽の自然さが失われてしまう。

クリッパー

 リミッターやコンプレッサーは大きな音が入ってから音量を絞り込む動作が行われる。その僅かな時間は耳で聴いただけでは判断しにくいが、きわめて大きな音の信号によって包装機が飽和してしまったり、通信回線や放送電波に悪影響が出てしまう。これを避けるためにリミッターやコンプレッサーが働き出すまでの僅かな時間(1m秒以下)音声電流の山を削り落とし一定範囲内の音量に強制的に押さえてしまう回路が必要になる。これがクリッパーである。
 リミッターもクリッパーも極端な大音量が送り込まれるのを防ぐための機器であるが、リミッターは音量を絞り込み、クリッパーはカットするという点が異なる。

利用シーンと使い分け

 また、コンプレッサーとリミッターは回路がきわめて似通っているために市販品の楽器用やレコーディング用機器ではスイッチで動作を切り替えられる物もある。
 最近の民放FM局やコマーシャルフィルムの音声などはこのコンプレッサーやリミッターを使用して声の強弱を少なくして聴き手にアピールしたりマイクに向かってささやいた声をパラメトリックイコライザーで加工してコンプレッサーを強く効かせる等積極的な音作りをしている場合もある。
そのための専用機器も市販されており、代表的な物がオーバン(ORBAN)社のオーディオプロセッサーオプティモッドである。
なお、放送局用機材ではリミッターを、その日本語訳である制限増幅器と言うことが多い。
 リミッターやクリッパーは送出部の直前に接続し、過大入力が送出機材に送り込まれることを防ぐ目的で使用する。
 ネットラジオ配信の場合は、ミキサーの出力とPCに接続されるオーディオデバイス(インターフェース)との間に入れる。
 マイクからの過大入力でミキサーが歪まないようにする目的ではマイクとミキサーとの間にAVCアンプとして入れる場合もある。
 コンプレッサーやリミッターを内蔵しているミキサーを使用する場合は試行錯誤で最適なレベルを決める必要がある。
 放送用では、コンプレッサー → リミッター → クリッパー の順に接続する。
この際にリミッターの動作点は絶対にクリッパーの動作点を超えてはならない。
もしクリッパーの動作点がリミッターの動作点以下の場合は送り出された音声に歪みが増えてしまう。
 オーディオブック等の音声朗読作品を作る場合もコンプレッサーやリミッターは必要となる。従来のアナログ録音では過大入力が入った場合は音が歪んで聞こえる程度であったが、ディジタル録音の場合はある点を超えた過大入力に対しては音が完全につぶれて全く聞こえなくなってしまう。
また、アナログ録音では歪を避けるためには音量を下げればよかったが、ディジタル録音の場合はレベルを下げると歪みも増えてしまう。そのため最適なレベル範囲が存在する。特に量子化ビット数の低い音声信号の場合はこの現象が目立つためにコンプレッサーなどの自動音量調節器は不可欠である。

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