アナウンスのトレーニング/調子の変かと意味の違い
調子の変かと意味の違い
これまで、一つ一つの音節の発音練習、そして、言葉のアクセントについて解説したが、ここからは、実際に文章を読むときの話に写る。
目次
「調子」とは
一つの言葉の中で、強さや高さを変化させるのがアクセントである。
これに対して、ここで解説する「調子」とは、一つの文全体の中での高さや強さを意味する。
一つの文章は、いくつかの文でできている。一つ一つの分の中で、強調すべき箇所を聞き手にわかりやすく表現するために、そこは強く、あるいは高めに発音する。
調子の変化による意味の違いの例
始めに、次の文を何も考えずに声に出して読んでみて欲しい。
【例文】昨日、夜に、ウグイスが私の家の庭で鳴いたので、驚きました。
次に、この文を書いた人が、どのようなことを表現したかったのかを考察する場合について考える。
これは単に事実を伝える文であるが、調子の変化によって、次のような内容を表現することができる。
- 「昨日」に重きを置き、
- 文章を書いたのが冬の終わりなら、こんなに早く
- 初夏であればこんなに遅くウグイスが鳴いたことに対する驚き
- 「夜に」に重きを置き、昼間に鳴くはずのウグイスが、夜に鳴いた驚き
- 作者が都会に住んでいると仮定し、「私の家の庭」に重きを置き、こんな都会でもウグイスが鳴いたことに対する驚き
- 「ウグイス」に重きを置き、他のどの鳥でも無く、「ウグイス」が鳴いたことに対する驚き
- 「鳴いて」に重きを置き、鳴いたことに対する驚き
これらを表現しようとした場合、どのような調子で読めばいいだろうか?実際にいくつか試してみていただきたい。
もちろん、この分だけでは、上記のどれが正しいのか判断することはできないが、ある程度のまとまった文章の場合は、前後の文脈から読み取れる場合がある。
例えば、この例文の前に、
「今年は、立春を過ぎても厳しい寒さが続き、春の訪れが大変遅いと感じていた。」
という1文があった場合は、おそらく「こんなに寒いのに、昨日」ウグイスが鳴いたことに驚いたと考えられるので、「昨日」に重きを置いた表現をすべきだろう。
また、例文の後に、
「この地域も、ここ数年で一気に開発が進み、日常生活の中で、自然というものに直接触れる機会は減ってしまった。」
という文章が続く場合は、「そのような状況の中でも、ウグイスの声によって、自然に触れられた新鮮な驚き」を表現したいと考えられるので、「ウグイス」に重きを置いた表現をする。
上記のように、文字で書くと同じ文であっても、表現したい内容が異なる場合があるため、それを調子の変かで伝えられるようにすることが大切だ。
音声解説
音声による解説をお聞き頂けます。
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